しかし、木というものは、動物と同じように細胞が集まってできており、この細胞自体は、どんな木でも組成や構造に大きな違いはありません。
ただ、比重が大きいということは木質部を形成する細胞間の密度が高いということで、同時に木そのものの体を作っている細胞間の隙間が小さいわけですから、水分の入り込みが少ない木でもあり、確かに良い燃料としての条件を持っています。
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このページでは、薪ストーブ・暖炉に使う木の種類とその性質についてご案内いたします。
日本人の行き過ぎたブランド信仰は、薪についても相当見られます。
よく「東コナラ、西ウバメガシ」と言われるのが薪用の人気樹種です。
これらはいずれもブナ科の木で、他にクヌギ、ミズナラ、カシ、シイなど、ドングリの木として親しまれるブナの仲間たちは、いずれも薪の原料として素晴らしい木です。
(ブナ科でもパチパチはぜるクリだけは、一部の人に敬遠されがちなようです。あの音が楽しいのですけれど)
しかし、「それ以外は薪として認めない」というスタンスの方がいらっしゃるのは、ちょっと困ります。
見た目のボリュームが同じなら、比重の大きいナラの方が、例えば軽いホウより長持ちするのは当然です。
しかし、木というものは、動物と同じように細胞が集まってできており、この細胞自体は、どんな木でも組成や構造に大きな違いはありません。
ただ、比重が大きいということは木質部を形成する細胞間の密度が高いということで、同時に木そのものの体を作っている細胞間の隙間が小さいわけですから、水分の入り込みが少ない木でもあり、確かに良い燃料としての条件を持っています。
「気乾比重」という木の重さの計り方があり、これは大気中で木を自然乾燥させてから計った比重で、含水率(木に対する水の重量)15%で計算します。
(つまりこの含水率15%は、日本国内の薪の理想の乾燥度を意味します)
先に例に挙げたホウの木は、気乾比重で見れば40%台の軽さです。
これに対しナラは70%弱、国内でもっとも比重の重い木のひとつであるウバメガシにいたっては90%台後半、ほとんど水に近い重さがあります。
つまり、ウバメガシはホウの木の2倍の密度を持っています。
火持ちの違いはここからくるのです。
ただ、【東京薪市場】では、スギやマツなどの針葉樹を含め、比重の小さい、軽い木が一概に悪い薪とは考えていません。
軽い木にも火付きが良く短時間で室温を上げられる、ストーブにくべる回数が多くなり、特に子どもたちにとって楽しい、短時間で火力を変えなければならない薪ストーブ料理には便利、体積当たりで見れば価格が安い、などのメリットがあります。
(もちろん、軽い木ではキリ、重い木でもナナカマドのような火付きが極端に悪い特殊な木は、薪ストーブには向きません)
一方、カミキリムシの1種であるカシノナガキクイムシが媒介するナラ菌によって、日本海側のナラとシイの立ち枯れは深刻です。
この虫が70年以上の老木を好むことから、里山の30年生を中心に伐り、萌芽更新によって森を再生させる薪炭林業はその利点が見直されています。
同時に、伐ったものは林外に運び、すべて利用するのがこれからの林業にとって大切なことです。詳しくは、「薪ストーブは地球を救う」ページをご覧ください。
幸い、【東京薪市場】の出品者の多い福島・宮城などは、まだまだ豊富なナラやクヌギの資源があります。
これらを大切に使い、萌芽更新を促進させることは里山にとっても良いことですから、これからも大いに扱ってまいりますが、だからといって、他の樹種はすべてパルプにしてしまうというのも、もったいない話です。
これらのことから、【東京薪市場】では、ナラ・クヌギ・サクラ・カエデ・ケヤキ・カバなど、一定以上の比重のある広葉樹であれば、これらはすべて乾燥さえさせれば良い薪の基準を満たすと判断し、重量を表示した上で「ミックス薪」として扱います。
同じ乾燥度で、同じ(体積ではなく)重量の薪からは、樹種を問わず同じカロリーの熱が発生する理屈です。単純に言えば、軽い木はその分多めにくべれば良い訳で、そのためにも【東京薪市場】では、出品される薪や原木の含水率と重量の表示は必須になっています。
また、ミックス薪としての出品でも、できる限り樹種の構成を明示し、その特長を説明の中に加えます。
もちろん、同一の樹種を揃える労力は高く評価すべきですから、「ナラ100%」「サクラ100%」などの商品も歓迎しており、一定のプレミアをつけることも自由、自分の好きな樹種を選んで買うことも自由です。
いずれの商品も、【東京薪市場】のガイドラインにしたがって出品していただく商品ばかりであり、また品質表示も明瞭に行っていただきますので、ユーザーの皆さまは樹種を気にせず選んでいただいても、また樹種をお決めになって探していただいても、安心と満足を感じていただけるようになっております。